理想の恋人って!?
 自転車を学生用駐輪場に駐めて校内へ入る。私の所属するラクロス・サークルは、試合や練習試合のない土日には活動しないが、部活やサークルによっては今日も活動しているらしく、校内には学生の姿が思ったよりも多かった。

 午後の明るい日差しの下、キャンパスを歩いて南側にあるグラウンドへと向かう。その一角にサッカーのピッチがあって、そこにえんじ色のサッカー・ユニフォームの学生の姿が見えた。練習試合の相手は紺色のユニフォームで、近くの大学のサッカー部のものだ。

 フェンスの中にはピッチを囲むようにコンクリートの階段があり、両校の応援と思われる学生がたくさん座っている。控えの選手とマネージャーのいるベンチの斜め後ろに空いている場所を見つけたので、フェンスの中に入って階段に腰を下ろした。

 ピッチを見ると、ちょうどコイントスが行われている。コイントスに勝った晃一たちのチームがエンド――いわゆる陣地――を決め、負けた相手大学チームのキックオフで試合が始まった。晃一は味方チームの中盤にいる。ミッドフィルダーと呼ばれるポジションだ。

 ピッチに立つ晃一は、普段の彼からは想像もつかないほど真剣な表情をしていて、鋭い眼差しで相手チームの動きを見ている。
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