理想の恋人って!?
5.本当の気持ち!?
 翌日曜日の朝十時、私はクローゼットの前で考え込んでいた。

 頭の中を占めているのは、昨日晃一と別れてからずっと考えていたこと。

 私が晃一を好きになったのは、彼が理想の恋人を演じてくれていたからなのか。それなら、今日、サッカー部のユニフォーム姿で汗を掻いている晃一を見たら、気持ちが冷めるかもしれない。

「よし」

 普段通りの晃一を見るなら、私も普段通りでなくちゃ。

 衣装ケースから、ロゴ入りのネイビーの半袖パーカーとオフホワイトのショートパンツを取り出した。それを身につけ、いつも使っているボディバッグを肩に引っかける。そして、いつも通りスニーカーを履いて、いざ出発だ。

 晃一はきっと朝には実家を出て大学に行っているはずだ。私はいつも通学するときと同じく、大学の最寄り駅まで電車に乗り、駅からはひたすら自転車を漕いだ。バスや自動車が頻繁に行き交うその道は緩やかな上り坂で、大学に着く頃にはしっとりと汗ばんでいた。

「暑ぅ~」

 今年も残暑は厳しいみたいだ。
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