理想の恋人って!?
「あのね、あれは晃一の演技なんだよ? 偽物の恋人とデートをして、たとえ恋に落ちたとしても、それはやっぱり本物の恋じゃないと思うの」

 それが正論だと思って答えたら、美佳は難しそうに眉を寄せた。

「明梨ってばもっと簡単に考えようよ。好きかどうかだよ? スーツ姿の晃一を見てぐっと来なかった?」
「ねえ、美佳はどうしてそんなに私と晃一をくっつけたがるわけ?」
「だって、私の親友の明梨と陽太の親友の晃一が付き合ったら、四人で一緒に遊びに行っても気を遣わないですむし、一緒に旅行に行ったりもできるじゃなーい」

 美佳がスプーンを持ったまま両手を合わせて、うっとりと言った。

「美佳が彼氏ができても私のことを大切にしようとしてくれるのは嬉しいけど、旅行くらい二人で行けばいいじゃない」
「えーっ、たくさんで行った方が楽しいよぉ。それに、友達が彼氏の友達と付き合ってるってステキだと思わない?」
「思わない」

 美佳の夢見るような言葉をばっさり切り捨て、私はため息をついた。そこへ、さっきまで黙ってショウガ焼き定食を食べていた陽太が会話に入ってくる。
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