汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
「だから冗談じゃねェって。自分の正体を明かすことはルール違反じゃねェみたいだし、無問題だろ。問題は、このあとお前ら人間ははどうするのかっていうことだ」


 スッ……と僕らの方に向けた瞳に、心なしか、不気味な光が帯びているように見えた。鋭くて冷たい、自分が人狼だということは真実だと言わんばかりの……そんな瞳。

 背中の辺りに、ゾッとした何かが駆け抜ける。……これは、悪寒だ。すぐには言葉には出来ないけれど、とにかくだめだ、まずい。このままだと、ダメだ。


「俺がお前ら人間を殺すか──お前ら人間が、俺を殺すか」

「っそんなこと、出来ねーよ!」

「あ?」

「だって、俺達は同じクラスメートじゃないか!そんなっ、殺し合いだなんてそんなこと……出来ないよ!」


 上杉くんの悲痛な叫びが、虚しく密室の中をこだまする。

 ……そうだよ。狼谷くんが人狼だとしても、狼谷くんがみんなから恐れられている存在だとしても、僕達が同じクラスメートだということに変わりはない。

 それに、たとえクラスメートじゃなくたって……少なくとも、僕にはそんな殺し合いだなんてこと、出来ない。殺し合いだなんてそんなこと、普通じゃない。

 もしかしたら、狼谷くんはいつものふざけた調子で、真面目にそれっぽい演技をして嘘を言っているだけかもしれない。というか、そうであってほしい。

 この状況じゃ決して許されない嘘かもしれないけれど、それでも、狼谷くんが本当に人狼なんだという真実よりも、「実は嘘でした〜」って……嘘の方が、ありがたい。
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