汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
「犬飼くん」


 僕自身、より良く周りの状況を眺めようと壁にもたれ掛かる形で座っていると、頭上から大上さんの声がした。

 教室にいる時も声を掛けてくれたけれど、今回も、また僕に何か用があるんだろうか?と、ゆっくりと顔をあげると、悲しそうな顔をした大上さんと目が合う。


「大上さん?」


 いつも笑顔で、常に周りには誰かがいて、クラスの中で輝いている彼女が僕に悲しそうな顔を見せるだなんて……。彼女に悲しそうな顔は、似合わないな。


「となり、座ってもいい?」

「……別に。いいけど」


 投げ掛けられた意外な言葉に驚きつつも、僕がそう言うや否や、大上さんは僕の隣に座り込んだ。揺れる髪からふわりとした甘いアロマの香りが、鼻をつく。


「その……つらくないかな? って思って……」

「……え?」

「なんと言ったらいいのか……。あのっ、妹さんのこともあるのに、続けてこんなことになっちゃって……」


 ああ。なるほど、そういうことか。教室にいた時のように、彼女なりに心配してくれているであろうことを察する。風子の話題であるならば、出来れば放っておいてほしいところだけれど……冷たくあしらうのは、さすがに酷かな。


「……僕は大丈夫だよ。ありがとう」


 一応、お礼の言葉を述べてみた。どんな形であれ、彼女なりに気遣ってくれているのだから、それに関しては素直に嬉しいしね。彼女は安心したように微笑んだけれど、一瞬にして不安そうな表情を浮かべた。
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