汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 ……生きてここを出られて、いつしか風邪を引いた時、洋子さんにプリンを買ってきてもらうよう、お願いしてみようかな。

 本当に訪れるのか分からない、そんな先のことをぼんやりと考えていられるくらいには、僕にはまだ……余裕が残っている、っていうことなのかな……。


「あと……力になるようなモノっていうと……」


 自分の顎に人差し指を当て、考え込む大上さん。やがて、ひとつの結論に辿り着いたらしく、冗談っぽく、そしてあどけなく笑う。


「あは。あとはもう、肉、しか思い浮かばなかった」


 結局のところ、調理次第ではあるけれど、風邪を引いた時に胃に優しいかはさておき、力をつけるには肉がいい……という結論に至ったんだと思う。

 となりにいる野々宮くんは、大上さんが冗談っぽく言ったことを理解した上で「間違ってはいないけど」と同意し、遠慮がちに微笑む。


「……にく」


 由良城さんのことを思い、考えた結果、派生してうまれた何気ない会話。大上さんが何気なく発したとある言葉のひとつに、ぴくり、由良城さんの肩がわずかに反応した。


「あんまり食べ過ぎると胃がもたれちゃうかもしれないけどね、はは」

「……にく……肉……ニク……」


 耳を澄ますと、わずかに聞こえる声量。

 繰り返される、同じ言葉。

 それを発しているのは、未だ顔を自分の足に埋めて丸まるように座っている、由良城さんから聞こえるものだった。


「……慧? お前、さっきから様子が変だぞ?」


 様子のおかしさに気がついた野々宮くんが、不審そうにそう尋ねた瞬間だった。
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