汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 ピキンッ──と、由良城さんを中心とした辺りが、凍り付くような気配に覆われる。周りのみんなはそれに気が付いていないようだったけれど、僕はなんとなくそれを察知した。……察知してしまった。


「様子が……ヘン……?」


 何か触れちゃいけないことに触れてしまったのか、ぷるぷると震え出す由良城さんの肩。……いや、身体全体。

 発せられた声音はいつも以上に低音で、聴いたことがない。ゾッとした悪寒が背中を走り抜ける。


「聡志には……分からない……。私のことなんて……私の、気持ちなんて……」

「さと……り?」


 さすがの野々宮くんも異変に気が付いたようで、由良城さんの名前を呼ぶ声が若干震えていた。


「もう、ダメ……」


 由良城さんの呼吸が荒くなっていく。


「ガマン、できない……っ!!!」


 ──由良城さんがそう叫んだ次の瞬間、体調を崩していたというにはあまりにも俊敏な動きで、比較的近くにいた如月さんに向かって飛び掛かった。

 体調を崩していた、というのは結局のところ憶測でしかないけれど、そんなことを微塵と感じさせない素早さだった。


「ちょっ、いきなり、なに?! やめてっ!いたっ、助けっ……いやああああああっ!!!」


 不意打ちにも等しい由良城さんの飛びかかりに、当然ながら如月さんは驚き、困惑する。そして、思わず耳を塞ぎたくなるような悲痛な叫びが耳をつんざいた。

 その悲痛な叫びはすぐに止んだのだけれど、代わりに聞こえてきた一定の感覚で聞こえる不快な音にたじろぐ。

 くちゃくちゃ、ぐちゃぐちゃ、と。……それはまるで、獣が肉を食らっているかのような……そんな、音で……。


 ──ケモノが……肉を……?
< 76 / 103 >

この作品をシェア

pagetop