汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 ぐっ、と、両手で鉄の棒を握って身構える火神くんを見ても、由良城さんは目を細めてフフッと小さく笑うだけ。……これは、嘲笑っている、の?

 それとも……余裕から見せる、笑み?


「バカにしやがって!」

「バカじゃねぇ!ウマシカだって!」

「お前のことは言ってねー、っからぁ!!!」


 〝馬鹿(バカ)〟という発言に反応した馬鹿(うましか)くんに対しての言葉と同時に、鉄の棒を振り下ろす火神くんだったけれど、由良城さんはそれをスイッ……と、簡単に避けてみせた。


「くっそ!!!」


 目前にいる人狼への恐怖からか自分の身体を素早く立て直し、息のつく暇もなく続けて鉄の棒を振りかざすと……──彼女はニヒッと不気味な笑みを浮かべながら、伸ばした自らの長い爪で、鉄の棒を真っ二つに切り裂いた。


「そんな陳腐な鉄の棒1本じゃあ、私を殺すどころか──傷1つも、つけられないよ?」

「なっ……!」

「それとも、端から殺す気、ある?」


 鉄の棒を切り裂いた左手とは逆の……もう片方の由良城さんの手が、勢いよく振り上げられる。クラスメートを切り裂こうとして。火神くんを、切り裂こうとして。それが完全に振り下ろされた時、火神くんは、火神くんの身体は──。


「やめろ!慧ぃいいいっ!!!」

「っ?!」


 叫んだのは、野々宮くんだった。

 その声に(ひる)み、振り上げた由良城さんの右手がビクッと震えたのを見計らって、素早く野々宮くんは由良城さんの前に立ちはだかる。……火神くんを、かばうようにして。

 これ以上は誰も殺させないと、大切なクラスメートのひとりを殺させないと、そんな思いが込められた両目で、真っ直ぐに由良城さんの瞳を見つめる。
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