一方通行恋愛~この恋、全員片想い~
【孝太郎の場合】



 大人しい女の子、それが第一印象。


 父子家庭だというのは、昼休み女子が喋ってるのが聞こえてきて知った。

 一人で家事をこなしていること、下に弟がいて家族3人分のお弁当を作っていること。


『大変じゃないよ、楽しいよ』


と彼女は笑っていた。

 
 彼女は普通の子だった。

 聞き役になりがちではあったけれど、よく笑う子だった。

 本当にどこにでもいる普通の子だった。


 授業の一環で、ミュージカル映画を見たときだ。

 問題のある子供たちを歌を通して正しい道へ導く感動ストーリー。

 歌声が響く教室で、ふと視線を向けたとき、彼女の目から一筋涙が流れた。


 じっと、真っ直ぐ見つめる目から、スーっと流れ落ちた涙。

 気付けば目が追っていた。

 いつも笑顔を浮かべ周りに振りまく彼女が流したその一筋で、すでに彼女に恋をしていたことを知った。
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