晴れ、のち晴れ

べたべたで気持ち悪かったけれども、体を拭くタオルを持っているはずもない。

通り行く人々が不思議そうに見ているので、あたしはここぞとばかりに笑顔を浮かべた。

同情されるなんて、気持ちが悪い。


「梨羽?」

後ろから掛けられた声に、あたしは目を見開いた。

ここにいるはずのない奴だ。

振り返ると葵が、怪訝そうな顔をして立っていた。


「どうして、ここに…」

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