晴れ、のち晴れ
「馬鹿にするなっ」
あたしは両手で葵の胸の辺りを強く叩いた。
「してない」
「あんたなんか、自分のことも大切にできないくせに」
「それと、俺がお前を可哀相だと思うのは別のことだ」
「一緒だっ」
子供の癇癪のようにあたしは叫んだ。知らず知らずのうちに涙が浮かぶ。
「俺は自分がどうなってもいいと思っているかもしれないけど、俺の周りの奴がどうなってもいいとは思っていない」
こんな時でも自分のことは、どこか遠い出来事のように語る葵に、なんて言葉を返したらいいのか分からず、あたしは俯いた。
そっとあたしを体を葵が抱き留め、ぽんぽんと頭を叩いた。
子供扱いするなと言おうかと思い、結局やめた。