Focus
「……知っているよ、全部。沙那のお母さんの余命がいくばくもないことも。
お母さんを安心させたくて結婚を焦っていたのも。
お父さんさんから聞いたことはない? 会社の経営陣に外部からヘッドハンティングした人材を置きたいという話。沙那のお父さんの会社は外食産業だろう、それで俺にまで話が来たんだよ。
沙那のお父さんは、俺と沙那が付き合っていることを知らないでいろいろ教えてくれたよ」
何かに耐えるように唇を噛み締めた沙那さんは、ギュッと指を握りしめて顔をあげた。
「……だから? 関係ないでしょうあなたとは」