Focus

皆が息をつめて二人を見守っているので、わずかなささやきでしかない沙那さんの声も拾うことができる。

「……どうして」

「俺は覚悟を決めたんだ。沙那の考えを聞かせて欲しい」


震えている沙那さんの隣に行かなくちゃいけないのに、まわりを跳ね退ける御山さんの威圧感で近寄りがたい。


むやみに割り込むのではなくて、状況を理解したほうがいい、そう考えて唇を噛み締める。


「沙那。結婚しよう」


まわりなんて気にせずに御山さんがプロポーズした。王子めいた整った顔が真剣な表情を作っている。


「なんで、今なのっ…私がどんな思いでいたか知らないくせに……」

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