いい加減な恋のススメ



だけど、私にはそれが出来ない。


「……無理、今すぐ返事するなんて」

「……」


私がそう言うと時間差で小田切先生がズルッとずっこけた。


「あ、俺が無理ってことじゃなくてね」

「……うん」

「吃驚した、振られたかと思った」


その瞬間、私たちの隣を3人組の女子生徒が「泉ちゃんと小田切先生だー」と通っていく。
小田切先生は「気を付けてね」と微笑むと彼女たちを見送り、そして先程のように力が抜けた顔に戻った。


「じゃあ、もう少し待とうかな」

「……い、いいんですかね。助かりますけど」

「……それって教育実習が終わるまでに聞ける?」

「それは、はい……」


勿論、と言うと彼の心配そうな顔が明るくなった。
教育実習が終わったら小田切先生との関わりもなくなってしまうし、それは当たり前だろう。こうして彼を傷付けない方法を探そうとしたら気づかない間に先送りにしてしまっていた。


「ごめんなさい、こういうの初めてで」

「大丈夫、今忙しいし、こんな時にこういうことになってごめんね」

「……」


じゃあね、と小田切先生は私の気持ちを考えてくれてか先に去っていってくれた。
小田切先生はいい人だと思う。だけど傷付けない方法を探している時点で答えはもう出てしまっているんじゃないだろうか。

今のこの気持ちで、誰かを好きになろうとは思えない。



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