いい加減な恋のススメ
「おー、雨宮のおっさん」
「おっさ……幸澤先生!上司になんて口の聞き方!」
「いいんだよ、えーと、その威勢のいいお嬢さんが研修生の子だよね」
「そうです」
幸澤先生は少し体を横に向けて雨宮先生に私の姿が見えるようにした。
「安藤、この人世界史の雨宮先生。関わりはねぇだろうが」
「そんなことありません。同じ職場にいる以上、私の上司に当たりますから」
「熱心な心構えですこと」
「っ……」
私がキッと睨むと彼は顔を逸らした。そんな彼から雨宮先生に視線を変える。背が高くて白髪の50歳ぐらいの先生だ。
「いやー、やっぱり幸澤くんは可愛い子といると映えるねぇ。結婚しないの?若い奥さんを持つといい」
「うわぁ、上司にまで結婚心配されてるとかかなりヤバい」
彼が「参ったー」と顔を覆う。そんなの本気で思っているわけがないのに。
「それにしても2人とも仲良いね」
「まぁ一夜を共にしたな、」
「高校の頃の担任なんです!」
私がまた余計なことを言いそうになる幸澤先生の脇腹を思い切り突くと被せるように言い放つ。
そうかいそうかい、と微笑む雨宮先生に対して私の隣で悶える幸澤先生。
「それじゃあ幸澤くんは君の担任を持つのは2回目なんだね」
「……は、はぁ」
「幸澤くんはいい教師だから勉強になると思うよ」
「……」
いい教師、なんて。
「(そんなの、昔から知ってた……)」