わがままなキッス☆ 【短編】
5. 不器用と鈍感
この事がきっかけで
僕と前川さん
改め由里ちゃんは
以前より
気軽に話すようになった。


「沙織、惣太君、おはよう。」


由里ちゃんは
僕たちの肩に手をかけ
間に割り込む。


「あっ、由里おはよう。」


『おはよう。』


僕は沙織との朝の登校を
邪魔された気がして
少し不機嫌になる。

彼女はそれを見て
クスクス笑っていた。


なんか面白がられてる気が…


「由里?何笑ってるの?」


「ん〜何でもないよ。」


沙織が不思議そうに
彼女の顔を覗き込むが
それを気にもとめず
僕に話しかけてきた。


「あっねぇ惣太君
後で教室行くから
数学教えてくれないかな?
今日当たるんだよねぇ。」


『うん。別にいいけど。』


「ありがとっ!じゃ後でね。」


そう言って僕の背中を
ポンっと叩き
由里ちゃんは別の教室へ行く。


「なんか最近、惣太と由里
仲いいよね…」


『えっ、なんか言った?』


沙織が何かボソッと
呟いたので聞き返すと


「なんでもな〜い。」


沙織は教室へ向かって
走って行ってしまった。


僕は沙織の後ろ姿を見つめる。
変な奴……
いつもは声がでかいくせに
肝心な事は声が小さくなる。



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