【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私の肩に触れる成の指に、微かに力が篭るのが分かった。


澄んだ黒目から、先程よりも大粒の涙が落ち、ルイの光の粒とはまた違うそれに、息を呑む。


互いに何も言わずに見つめ合い、その心地よさにしばらく呼吸すら忘れそうにその澄んだ黒目の中に身を投じていたが。


「お前人に心配かけて起きぬけに笑里に何してやがる!この猿!」


「イテー!酷い!こんなにボロボロの成ちゃんにも里佳子さん容赦ない!」


寝起きの里佳子が何か勘違いをしたらしく、成の言葉の通りボロボロの身体にも関わらず容赦無く頭を叩いている。


そして、ぐしゃりと顔を歪め「ううう……」と唸り、私と成へダイブした。


「お前なんか嫌い!心配掛けやがって!何でお前の為にこんなに泣かなきゃいけないんだよ」


「うん。ごめんね。ごめん、ありがとう」


言葉とは裏腹に、里佳子の温もりは成を大切にしている何よりの証拠。


「ん……はよ。成、無事に目が覚めたんだね。やっぱり成がいると賑やかだ」


わんわん泣き出した里佳子の声で目が覚めたらしい燭は、眠そうな瞼を半分だけ重たそうに開き、緩やかに微笑んだ後この中で一番長い腕を使い、纏めて全員抱き締めた。


温かい。これが人と心を同じ速度で歩ませた温もりなのだろうか。


……いや、ずっと前から、私は知っていた。ただ傍にあったのに、ずっと失ったふりをしていただけ。
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