【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
光の映像が途切れ、体育館が静寂に包まれた。


「ルイ……ルイ、ルイ、ルイ!」


白い薔薇に包まれ、永い眠りに就いたここにいるルイの名を、何度も呼びかける。呼びかけても返事は無い。


「泣けないよ。だから君が泣いてくれていた。ねぇ、泣いて。悲しい私の代わりに泣いて」


柔らかなルイの頬に触れても、ルイの温もりはもう感じない。鳥の囀りのような綺麗な声も、宝石みたいな茶色い瞳も、もう私には聞こえないし、映らない。


瞼が熱い。視界が滲んで、愛した存在が何も見えない。


指先に、湿り気と熱い温度を感じた。もうそれしか私に感覚を齎さない。でもそれは、ルイの大切な宝物のひと雫だと分かった。


「ねぇ、泣いているの?ルイ、泣けない私の代わりに、泣いているの?」


答えは返ってこない。ただ、柔らかな頬が、大粒の涙で濡れるだけ。


ルイは形を失い、もう私に二度とは触れてくれない。だけど、ルイはこの先も私の代わりに泣いてくれるのだろう。


「あ、あああ……!ルイ、ルイ……!」


瞼の熱は、ルイが泣いて落とすひと雫を、私が代わりに抱き締めて離さないようにしている温度。


先に私の頬と、それから顎を濡らしてルイの頬を濡らすものは、私がルイの涙を独り占めしようと、愛してると叫ぼうとしているひと雫の君の宝物。


ルイ、答えて。君の涙は本物ですか?


聞こえる嗚咽は四つ。成と、里佳子と、燭と、それから……私の。


だけど、泣いているのは私じゃなくてきっとルイ。これは、私の代わりに泣いているのか、はたまたルイの心の涙なのか、何度問いかけても答えは返らない。それでも、飽きるまで問いかける。


ねぇルイ、君の涙は本物ですか?


君の涙は、本物ですか?





R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
【完】
< 369 / 369 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:10

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

きっと、月が綺麗な夜に。
圓谷愁/著

総文字数/109,094

恋愛(キケン・ダーク)213ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「大丈夫。とらは一人じゃないから」 そう言って笑った隣の少女は、縁側にふかふかと陣取る猫達のように自由で、穏やかで、空に浮かぶ三日月のように瞼で弧を描き、あどけなく、微笑んだ。 □■□■□■□■□■□■□■□■□ 離島の新人小学校教諭 冴島 虎治郎 Kojiro Saejima × 拾ったワケあり少女 美矢 Miya □■□■□■□■□■□■□■□■□ 「とらがちゃんと泣けるようになったら、あたし、きっと帰るから」 「待つのは嫌いだ。知ってるだろ?だから……」 掴みどころのない君を、気分屋な君を、僕は、僕のスピードで取り戻す。 君を想うと、きっと、今日も『月が綺麗』だ 2020.06.12〜執筆開始 2020.06.17〜公開 ©syuu-tumuraya
【完】ヴァンパイア、かなし
圓谷愁/著

総文字数/90,240

ファンタジー200ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
僕は『人間』でありたい。 そう切望する そう願望する その度に貴方の笑顔で胸が締め付けられていく。 先輩、僕を『化物』に変えないで ヴァンパイア×人間の少女 これは、現代に溶け込み、ひっそりと生きるヴァンパイアの少年の 悲(かな)しくも 愛(かな)しい ちっぽけな物語 2015/5/14 完結
【完】籠球ロマンティック
圓谷愁/著

総文字数/170,138

青春・友情388ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
中学時代の輝かしい栄光を心の中で引き摺り続ける、現在不良(見た目のみ)、15歳。 そんな俺を再びその世界に引き摺り込むのは、男子の憧れ、学年一の巨乳ちゃんだった。 バスケバカ×バスケバカ=無限大 それぞれが悩み、苦しみ、むず痒い程の青春に囚われていく。 青春は、あの頃よりも酷く輝いていた。 2014/4/1 執筆開始 2014/8/27 完結 ©愁檎

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop