甘いペットは男と化す
 
パラパラと、一番上にあったノートをめくると、そこにはいろんな筆跡で書かれたコメントが書かれている。


なるほど。
この席に座ったカップルのみ、落書きが出来るんだ……。


いわゆる思い出ノートみたいなもので
この店の感想や、付き合って何ヶ月など、カップルのコメントがたくさん連なっている。


頼んだ紅茶が来て、それをすすりながら一番下のノートを手に取った。


それは今から2年ほど前。
外装からもなんとなく分かっていたけど、この店はそんなに古くはないらしい。


パラパラとめくる中、
まるで分かり切っていたかのように、俺の手が止まった。



【○○年3月25日
 初めてこのお店に来たヨ!
 クローバーが可愛いし、ケーキもおいしいし気に入っちゃった♪
 これからいっぱい通いたいと思う!

     景&沙樹】



「……」



ドクンドクン……と、体全体に響き渡りそうなほど大きく心臓が揺らめく。



可愛らしいその筆跡は、彼女にあたる、沙樹という子ので……

そこに書かれている、【景】は、自分であると……。
 
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