甘いペットは男と化す
「……やっぱいい。お前のところには泊まんない」
ケイはあたしの上からどくと、さっさと玄関へと向かって行った。
その背中は、やっぱり寂しく見えて、思わず後を追ってしまう。
「ケ……」
「お前といた俺は、偽りの俺。
だから忘れろ」
「……」
そしてそれだけ言うと、ケイは一人外へと出て行ってしまった。
「………何、それ……」
足音すらも聞こえなくなってから、ようやく嘆きだされた文句。
忘れろだなんて、よく簡単に言えるよ……。
あんなに何度も人を好きだと言っておきながら……。
「あたしだって……忘れられるものなら忘れたいってのっ……」
もしあの時のケイが、本当に偽りの姿だと言うのなら
あたしはもう、無邪気で子犬のようなケイを追いかけてはいけない。
彼は確かに存在して
だけど存在してはいなかった性格だったのだから……。
「………何やってんだよ。俺は……」
ケイの静かな嘆きは、夜の喧騒へと消えて行った。