甘いペットは男と化す
 
「え……」


予想外の出来事に、あたしも呆然としてしまった。

自分の知らないところで、ケイがそんなことを矢代さんに聞いていたなんて……。


「名前で呼んでるし。
 なんか……すげぇ敵意を向けられてる気がしたし」

「……」


そんな……そのはずは……。

今のケイは、あたしになんか眼中にないはずだ。
たとえあったとしても、それはただの興味本位。
自分が記憶を失っていた間、好きになった女がどういう女なのかという……。


「ちょっとした知り合い程度です。ほんとに……。
 正直、あたし、彼の名字が村雨だっていうことも、つい最近まで知らなかったくらいですから」

「……そっか」


あたしの返答に、疑問に感じながらも矢代さんはそれ以上問い詰めることはなくて、
険しい顔も緩めて、いつものにこっとした微笑みに変えた。


「ごめんね、変なこと聞いて。
 俺、彼氏でもなんでもないのにね」

「……」


無理やり作った笑顔だと分かっても、それを突っ込む勇気もなく、
フロアへ戻っていく矢代さんの背中を、ただ見送っていた。
 
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