甘いペットは男と化す
「村雨景って……その会社の御曹司のことですよね?」
「え?」
矢代さんが去ったあと、横から聞こえた言葉。
驚いて振り返ると、菅野ちゃんが興味津々にこっちを見ている。
いや、その前に……
「御曹司って?」
そのことすら、あたしは分かってない。
「え?だから、ビレッジレインの社長の息子さんじゃないですか。
すごいイケメンで優秀だって、あたしたち業界の女子の間では有名ですよ!」
「そう、なんだ……」
それは初耳……。
あたしも一応、女子なんだが……。
まあ、これが25歳を過ぎているか過ぎていないかの違いなんだろうけど。
「なんでも、ずっと会社を継ぐ気はなかったみたいなんですけど、最近になって急に継ぐ気になったとか……。
今はただの社員として働いているけど、おそらく彼が会社を継ぐんでしょうねぇ」
「へ、えー……」
全く知らなかったその情報。
ケイが社長の息子……?
ビレッジレインは、うちの会社でも昔から取引をしている会社の一つで、一部上場のそれなりの会社だ。
よく考えれば、ビレッジレインって……「村」「雨」よね。