甘いペットは男と化す
 
「……そっか…」


その言葉を聞いて、矢代さんはくしゃっと顔を歪めると、ようやくあたしから視線を逸らした。


「いけるって、思ってたんだけどなあ……」
「ごめんなさい……」
「謝んないでよ。俺が惨めじゃん」
「すみま……あ…」
「もう……」


再び謝ろうとしたあたしを、じとっと睨む。
だけどすぐに笑みを浮かべて、カウンターに置かれたスプモーニを飲んだ。


「いけるって思ってたけど……
 昨日のタクシーで無理だってすぐに分かった。

 悔しいけど、あの時北島さんをさらってった村雨くん、すげぇカッコよかったから」


「あ……昨日は…すみません……」

「いいよ、いまさら。
 北島さんに選んでって言ったんだから……。
 あれが、君の答えだったってことでしょ?」

「……」


確かに、あの時も矢代さんはあたしの好きにしたらいいと言ってくれた。

部屋に彼を招き入れるのも、どこかで二人で飲み直すのも、何もせずに自分だけマンションで降りるのも……。


だけど結局、あたしはタクシーに乗ることすらしなかった。
 
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