甘いペットは男と化す
「自意識過剰かもしれないけど……
俺が原因とか言わないよね?ほら、振って申し訳ないとか……」
「そんなんじゃないですっ……。
あ、確かに申し訳ないとは思ってますけど、でもそれはそれで……」
「うん。ならよかった」
勝手に必死になってしまったあたしに、矢代さんは軽く微笑むと前を向き直した。
「北島さんはさ、なんでも一人でやろうとするよね。昔から」
「え?」
まるで何かを思い出しているかのように、矢代さんは笑いながら見上げている。
それはあたしの知らない、矢代さんの思い出……。
「菅野さんが受付として入る前、ずっと一人だったでしょ?
お昼もまともにとらずに、仕事に人一倍責任感が強くて……」
「そんな……」
「だからほんと、真面目なんだなー……頑張り屋なんだなーとか……そんなところ含めてずっと見てた……。今さら、またこんな告白ずるいかもだけど」
「……」
「って、俺が今言いたいのはそんなことじゃなくてっ」
つい、またあの時のように気持ちを伝えられ、返事に戸惑っていると、矢代さんもハッとしたように我に返った。
コホンと咳をして、あたしを見つめる。
「だから北島さんなら、どんな場所でも頑張れるから。
自分の力、信じて大丈夫だよ」
それは、あたしの背中を押すのに十分すぎる言葉だった。