甘いペットは男と化す
 
「矢代、さん……」
「この俺が惚れた女の子なんだから。並大抵なものじゃないって!」


ポンと軽く背中を叩いて、冗談交じりで言葉を繋げる。
嬉しくて、じわりと涙が浮かんだ。


「大好きな人もいるんだし、疲れたら彼を頼りなよ。
 だからもし今、どうしたらいいのか立ち止まってるんだったら、自分の視野を広げてみな?
 今の自分に見えてないものが、きっと見えてくるはずだから」

「……はいっ…」


頷くときには、大粒の涙が一粒零れ落ちた。


矢代さんは、本当に素敵な人だった。
ケイに出逢っていなかったら、きっと間違いなく好きになっていた。

だけどそれは、今考えても仕方のないことで……


「あたし、この会社が大好きでした」


それは矢代さんのような、魅力的な人の集まりの会社だったから……。


「だからここ以上の会社を見つけてきます」

「おう」


今さら戻ることが出来ないから……
あたしは前を向いて歩く。
 
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