甘いペットは男と化す
「お金はいりません。ケイさんとも別れません」
「……どうしてもか?」
「はい」
目を細め、じっと睨んでくるその威厳は、車の中の気温を軽く5度下げている気がした。
これが、相内先生もやられたことか……。
きっと先生は、お金に目がくらんで受け取ったんじゃない。
お父さんの気迫に押されて、お金を受け取らざるを得なかったんじゃないか……。
「困ったね……。
私には、君があの会社を支えられる人間には見えないのだが……」
「……」
あの会社というのは、つまり自分の会社。
ゆくゆくは、ケイが継ぐであろう会社。
「知っているかい?ビレッジレインは決してあのビルだけではない。
福岡、大阪、札幌にも構えている。
そしてもうすぐ名古屋にも構えるが……ケイにはそこの支社長になってもらうつもりだ」
「え……?」
「だからもちろん東京を離れてもらう。
君はどうするつもりだ?無能なまま、名古屋についていく気か?それとも、ただ東京で指をくわえて待っているのか?」
「……」
嫌味ばかり含まれた言葉。
だけど何も言い返せなくて、悔しさだけが胸に膨らんだ。