甘いペットは男と化す
「すまないね。こんな遅くに」
「いえ……」
言われるがままに、あたしも車の中に乗り込んだ。
ふかふかのシートに、足が思いきり伸ばせる座席。
高級車なんて初めて乗った。
マンションの前に停められたまま、ケイのお父さんは話を切り出した。
「さっそくだが……。
これを君に託す」
「え?」
そう言って、ケイのお父さんは何かを差し出してきた。
暗がりの中で、イマイチよく分からない。
道路の街頭を頼りにその渡されたものを見やると……
「っ……受け取れませんっ!!」
それは、札束が入った茶封筒だった。
「なんだい?足りないか?」
「そうじゃなくてっ……」
「君の希望通りの金額を支払おう。そのかわり、景と別れてくれ」
「…っ」
まるで人の話を聞こうとしない、一方的なやりとり。
とにかくあたしは、手渡されたばかりの茶封筒を、ケイのお父さんへと押し付けた。