甘いペットは男と化す
 
「なぜお前がここにいる……」
「御社の面接を受けに参りました」

「社長、お知り合いだったんですか?」


あたしと村雨社長のやりとりを聞いて、面接担当の人事の人が困惑していた。

社長は人事を一瞬だけ見やると、


「……いや、なんでもない。続けてくれ」
「はい。こちらが彼女の履歴書です」


社長は知らないふりをし、人事からあたしの履歴書を受け取った。


目を通して、眉がピクリと動いたのを見逃さなかった。

きっとこの人は、もともとのあたしの能力は知っているだろう。
ケイと付き合っていると知ったとき、ある程度のことは調べているであろうから……。


「彼女は、秘書検定の資格、英語レベル、そのほかパソコン等においても申し分のない存在だと思っております。
 秘書は未経験ではありますが、受付総務を経験していたのであれば、それなりの器量もあるとは思いますので」

「……」


社長の横に並び、あたしの情報を流す人事。

今、最終確認として社長と顔を合わせているが、これは通常形だけの面接。
一次、二次、役員面接を終えたあたしは、今問題を起こさない限りは採用と言う形になる。

人事の人にそう聞いたので、人事の人もそう思っているが、社長のいつもとは違う反応に、少し戸惑いを見せていた。
 
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