甘いペットは男と化す
 
「どうせ、お前もそこで聞いているんだろう?入ってきなさい」
「え?」


社長の目線が外れ、あたしの後ろを見て一言言い放つ。
なんのことか分からず、首をかしげていると……


「……」
「ケイっ……」


ガチャリという音とともに扉が開かれ、入ってきたのはケイだった。


「この娘は予想出来ないことばかりするな」
「だろ?俺が命がけで惚れた女だから」
「ふんっ……」


息子の言葉に、鼻で笑う父親。

だけどその瞳は、以前のように見下しているような瞳ではなくて……


「お前の母親にそっくりだ」
「は?」
「所詮、俺とお前は親子だということだ」


その言葉を、すぐには理解出来なくて、ケイもきょとんとしている。

それは、ケイが幼い頃出て行ったと言っているお母さんのことで……
ケイのお父さんが好きになった人のこと。


「お前も仕事ばかりになって、逃げられないようにするんだな」

「……親父と一緒にすんなよ」


父親の言葉の意味が分かったケイも、面白そうに笑っていた。
 
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