甘いペットは男と化す
 
「今日、東京を発つって北島さんに聞いてたからさ」
「あ……そうですね」


あれから、ぎりぎりまで相内先生のところの英会話教室に通っていた。

だけど引っ越すにあたって、これから通うことはできなくなるので、ここを辞めると言うことと引っ越すことは伝えていた。
だからといって、まさか駅まで、見送りに来るとは思わなかった。


「何しに来た?」
「……相変わらず、喧嘩腰だなぁ……。仕方ないけど」


あからさまに不機嫌になるケイに、それを見て苦笑する相内先生。
正直、どっちについたらいいのか分からない。

でも……


「あの………あたし、ちょっとトイレにでも行ってますね」


この場では、あたしは明らかに邪魔者であろうと思ったので、席を外そうと思った。

だけど、


「いい。ここにいて」


それをケイがあたしの手首を掴んで引き留めた。


「でも……」
「いいの。北島さんにも聞いててもらいたいから」
「……はい…」


相内先生にまでそう言われたら仕方ない。

あたしは引いていた体をもとに戻し、相内先生へと向き直った。
 
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