甘いペットは男と化す
 
「ひゃっ……」


立ち上がると同時に、避けていた風が突然襲って、あたしの髪を大きく乱した。


「もー、風すごすぎ。
 絶対に潮風でベタベタだよ」

「……」


バサバサと、舞い上がるロングの髪。

高校生の頃から、ずっとロングヘアを保っている。


「結んでくればよかった」

「…………キ…」

「え?」


風にまみれて、ほとんど聞こえなかったけど、うっすらと聞こえたケイの声。

不思議に思って振り返ると、



「……ぁ…」



瞳孔が開いているような、目を大きく見開いたままのケイが突っ立っている。


「ケイ……?」

「ぅっ……」

「ケイっ!?」


そしてその場にうずくまってしまうケイ。

慌てて、ケイの傍へと駆け寄った。
 
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