婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「芹香さん…。」
芹香さんは、興奮した様子で続けた。
「なつさんには圭ちゃんを幸せにする事なんてできないと思う。なつさんだって、私の身代わりなんて嫌でしょ…! だから 身を引いて」
もう 潮時だと思った。
私は真っ直ぐに芹香さんの顔を見て、声を振り絞って言った。
「わかりました。圭司のこと…お願いします…。」
◇◇◇◇
私はタクシーに乗って区役所へと向かった。
夜間窓口の職員から離婚届を受けとり、マンションへと戻った。
クローゼットを開けて、スーツケースに衣類を詰め込む。もともと このマンションには私が押しかけたようなものだから、そんなに荷物はなかった。
キッチンにあったシチューはタッパーに移し
冷凍庫へと入れた。
一息ついて、私は貰ってきた離婚届をバックから取り出した。
こんな紙切れ一枚で、私と圭司は赤の他人となってしまう…。
夫婦の絆なんて、脆いものだなと思った。
それでも、私にとっては一生に一度の恋だった。例え偽物の愛だとしても、これぼど人から愛せれることなんて、二度とないだろう。
私は、幸せだった…。
圭司と過ごした日々が次々と浮かんでくる。
大粒の涙がポタポタと落ちて、離婚届が滲んでいく…。
さようなら…圭司。
明日も私は、悪い女を演じるから…。
圭司がちゃんと芹香さんのところへ行けるように…。