俺様生徒会長に鳴かされて。
「へぇ、ずいぶん早起きじゃないか、彪斗。
いつも俺のこと『じじいみたい』ってバカにしてたけど、自分もじじいになっちゃった?」
「黙れ雪矢」
彪斗くんは、わたしの頭上ですごみを帯びた声で言った。
「てめぇ、俺のものに勝手になにしてんだ?」
「誰のもの、だって?
やれやれ彪斗、おまえのワガママには、ほんとにあきれるな」
答えずに彪斗くんはわたしが来ていた雪矢さんのカーディガンを引き剥がすと、椅子に投げ捨てた。
そして、メガネとヘアゴムをわしづかみにして、有無を言わさずわたしの手を引く。
「彪斗。
その子はものなんかじゃないよ。
あまりひどい扱いをすると、その内誰かの元へ逃げてしまうよ?」
「うるっせぇんだよ、雪矢。
…だれがなんと言おうが、こいつは俺のものだ。
おまえも、だれにも、指一本ふれさせねぇ」
そのまま手を引かれ、わたしは強引に彪斗くんに連れ去られてしまう。
ものみたいに…。
※
痛いくらい強く手を引かれたまま、館の敷地内を歩く彪斗くん。
怒っていると瞬時に伝わってくる背中。
「あや、とくん…」
震える声で何度か呼び掛けると、ようやく彪斗くんは、霧が薄くたちこめた湖の畔(ほとり)で立ち止まった。
「早く、なおせよ」
ぶっきらぼうにメガネとヘアゴムをわたされ、命じられるままわたしは髪を編み始める。
けど、次第に手が遅くなって、やがて止まった。
「わたし、メガネも三つ編みも、しない方がいいのかな…」
「は?」
「だって…しない方がいいって、みんな言うの」
寧音ちゃんも、雪矢さんも…。
たどたどしくだけど、わたしは自分の気持ちを伝える。
「わたし、もね、今日から新しい学校生活が始まるし…
寧音ちゃんも雪矢さんも彪斗くんも…みんな可愛くてかっこよくて素敵だから、わたし…
みんなの『仲間』なってもいいようになりたいの。だから…」
「……だめだ」