俺様生徒会長に鳴かされて。



「へぇ、ずいぶん早起きじゃないか、彪斗。

いつも俺のこと『じじいみたい』ってバカにしてたけど、自分もじじいになっちゃった?」


「黙れ雪矢」



彪斗くんは、わたしの頭上ですごみを帯びた声で言った。



「てめぇ、俺のものに勝手になにしてんだ?」


「誰のもの、だって?

やれやれ彪斗、おまえのワガママには、ほんとにあきれるな」



答えずに彪斗くんはわたしが来ていた雪矢さんのカーディガンを引き剥がすと、椅子に投げ捨てた。



そして、メガネとヘアゴムをわしづかみにして、有無を言わさずわたしの手を引く。



「彪斗。

その子はものなんかじゃないよ。

あまりひどい扱いをすると、その内誰かの元へ逃げてしまうよ?」



「うるっせぇんだよ、雪矢。

…だれがなんと言おうが、こいつは俺のものだ。

おまえも、だれにも、指一本ふれさせねぇ」





そのまま手を引かれ、わたしは強引に彪斗くんに連れ去られてしまう。



ものみたいに…。








痛いくらい強く手を引かれたまま、館の敷地内を歩く彪斗くん。



怒っていると瞬時に伝わってくる背中。



「あや、とくん…」



震える声で何度か呼び掛けると、ようやく彪斗くんは、霧が薄くたちこめた湖の畔(ほとり)で立ち止まった。



「早く、なおせよ」



ぶっきらぼうにメガネとヘアゴムをわたされ、命じられるままわたしは髪を編み始める。



けど、次第に手が遅くなって、やがて止まった。



「わたし、メガネも三つ編みも、しない方がいいのかな…」


「は?」


「だって…しない方がいいって、みんな言うの」



寧音ちゃんも、雪矢さんも…。



たどたどしくだけど、わたしは自分の気持ちを伝える。



「わたし、もね、今日から新しい学校生活が始まるし…

寧音ちゃんも雪矢さんも彪斗くんも…みんな可愛くてかっこよくて素敵だから、わたし…

みんなの『仲間』なってもいいようになりたいの。だから…」





「……だめだ」
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