俺様生徒会長に鳴かされて。

と拒もうとしたけど、



「ほんと?

見てみたーい!」


さっきの女の子がいっそう目を輝かせて見上げてくる。


飼育員さんも他のお客さんも、興味津々という顔だ…。



「歌ってみろよ、優羽。

学校の庭で歌っていた時のやつ」


「そんな、無理だよ…」


「さっき俺が言ったこと、もう忘れたか。

歌え、小鳥」





『見えてくるものがあるから』





彪斗くんはわたしに見せてくれようとしてるんだろうか。



新しい自分になるための、道筋を―――。





彪斗くんが導いてくれる道なら…



わたし、見てみたい気がする…。





大きく息を吸って、わたしは目を閉じた。





そして歌った。





お父さんがわたしのために作ってくれた、特別な歌を。





お父さんもわたしのこの得意技には感激していたみたいで、

わたしがもっと小鳥たちと仲良しになれるようにって、色んな曲を作ってくれた。



中でもこの歌はとびきり。



高く、細く―――。



やさしくて繊細な曲調に対して、とても難しい曲なのだけれど、



歌うと、とても楽しい。



まるで、自分も小鳥になったように、歌っていると心がのびやかになって、

空を羽ばたいているような気持ち良さに、ひたることができる。





うん。



そうだね、彪斗くん。



わたしはやっぱり、歌うのが大好き。



ずっとずっと歌って生きていけたら、これほどしあわせなことはない。



そんなわたしを、彪斗くんはとっくに見抜いてくれてたんだね。



わがままで、俺サマな王様、彪斗くん。



でもわたしのことを大事に思ってくれて、

そして

その力強い腕で、わたしを導いてくれる。



彪斗くんを信じて羽ばたいていけば、わたし新しい世界に行けるかな。



素敵で光り輝く世界へ、飛んでいけるかな…。





そっと目を開けて、



わたしは息を飲んだ。





小さな丘に、いつしか人がいっぱいに集まっていた。
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