イケメン侯爵様とお試し結婚!?
「・・・お父様の笑い顔を見たの、久しぶりだわ」
「そうか?」
「ええ。いつも怖い顔ばかりで。特にお母様が亡くなってからは」
「気丈に振舞っていたのが、裏目に出たかな」

お父様も、愛する人を早くに亡くして寂しかったのよね。
ヴァン様を好きになって、お父様の気持ちが良くわかる。

早くにお母様が死んで跡継ぎのいなかったお父様には再婚の話が沢山来ていただろう。
でもお父様は再婚しなかった。男手ひとつで私達を育ててくれた。
それだけお母様の事を愛していたのね。
でも、私達にはそれを見せまいと常に厳しい顔をして。
あれはお父様の精一杯の強がりだった。

「もう、強がらなくていいのよ、お父様。これからはお父様自身の幸せを考えてね」
「・・・ありがとう、アマルダ。何かと心配な娘だと思ったが、やはり母さんに似て思いやりのある子だな」

皺の増えた顔をさらにくしゃりとさせて笑うお父様。
私も、お父様達の子に生まれて幸せよ。




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