まどわせないで
「色気って! もうっこれでも精一杯お化粧してきたのに、どうしてそんな失礼なこというんですか!? 別に色気なんてあったってなくたって、パーティーには関係ないでしょ!? 男のひとから助けてもらったことは、嬉しかったです。ちょっと、怖かったし……ありがとうございました。でも、如月さんは、いつも口を開くと意地悪なことばっかりいってます! わたしのことを傷つけて楽しいですか? もう我慢の限界‼ 文句があるなら最初から誘わ――」

 わめきたてる小麦が、陸に向かって怒りの拳を振り上げる。叩くつもりで上げた小麦の手を掴まえ、引き寄せた。その勢いに胸同士が激しくぶつかり、唖然とする小麦の顎を指ですくいあげ、そのうるさい唇を、陸の唇が塞いだ。

「―――!」

 陸のもう片方の腕は、小麦を逃がさないように腰に巻きつく。
 文句をいっていた小麦は動きを止め、自分に起きたことが信じられないように目を見開く。目の前に、目を閉じたハンサムな男の顔。
 如月さんの温かく柔らかな唇が、わたしにキス?
 心臓が、確かに、一瞬止まった。次の瞬間には激しく動き出し、血流が身体中を駆け回り始める。
 どうしたらいいかわからず、立ち尽くしていると、陸の唇が離れていった。

「お前、話し長い」

 耳元で囁かれ、内容とは裏腹にびくっと体が震えた。フフッと耳に向かって笑う陸は、耳に唇で触れた。

「なんだ。お前、耳弱いの?」

 熱を含んだ声が耳に振動を与え、背中をぞくぞくさせる。

「へぇ」
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