吸血鬼の翼
「…え……イクシス…君?」
完全に混乱しきった美月は慌てたが、イクシスを押し退ける様な素振りをせず受け入れた。
確かに彼の行動に振り回され、分かり難い表情に理解を示せない部分は少なくない。
けど、今のイクシスの気持ちは何となくだけれど分かる。
寂しいって体中から溢れてる気がして。
私と同じだってそう思った。
本が入った袋を手に納めてるから、抱きしめられない。
それに、性格上私には難しい事だ。
今の状況に戸惑いや躊躇いの気持ちを繰り返し、困り果てている美月にイクシスは顔を横に転がす。
蒼い瞳に美月の痣を移した。
「ひゃあ!?」
突然の思い掛けない出来事に美月の口から間抜けな声が漏れる。
イクシスは美月の首に残る傷と痣に口付けを落としたのだ。
いきなりの不意打ちに美月は肩を揺らした後、硬直する。
一方のイクシスは早く、早く治れと願を掛ける気持ちで幾度かそれを繰り返している。
我に返った美月は慌ててイクシスの肩を両手で押しやった。
「あの…!ちょっと困る…んだけど」
拒否した美月は顔を真っ赤にさせて言うのもだから、説得力がない。
首筋を左手で抑えて涙目になる美月に思わず、クツクツと喉を鳴らして笑った。
「な、何が可笑しいの!」
更に赤面した美月はキッと強くイクシスを睨みつける。
こういう事に免疫がない美月はイクシスの取った行動に仰天するばかり。
危険人物だ。ある意味。
そう判断した美月はその場から、直ちに逃げようとする。
しかし、それも虚しく手首を掴まれイクシスの所に引き寄せられた。
「…逃がさないよ…、宜しくって言ったでしょ?」
真顔で美月に言うが、何となく勝ち誇ったイクシスの雰囲気に美月は心の中で悲鳴を上げた。