吸血鬼の翼
家に帰ると母はまだ帰ってない様で静かだった。
人の居る気配はなく、物寂しい空間が漂っている。
“こんな所”に私だけ居たのだと思うと何だか少し怖くなった。
何でだろう…
こんなの…いつもの事じゃない……
首を左右に振って、考えるのを止める。
取り敢えず、後ろに居るイクシスに家に上がる様に促す。
「大丈夫…?」
異世界から来たばかりだからか、イクシスは少し戸惑っているみたいで中々、家に入ろうとしない。
さっきはあんなに気丈に振る舞っていたイクシスでも、初めての世界に困惑している。
あ、でもイルトは凄い好奇心旺盛でこの世界に対して積極的だったなぁ…
美月が玄関から上がった床でイクシスが入るのを待つ間、イルトの事を思い出して微笑む。
「………みづき。」
「え?」
暫く、そうしているとイクシスから声が掛かる。
美月は呼ばれた意味が分からずにイクシスへ視線を向けた。
「……ん、呼んでみただけ…」
「…??」
そう言うとイクシスは柔和に微笑んで蒼い瞳を細める。
美月が不思議そうにしている傍ら、イクシスはすんなりと家の中へ入った。
「私の部屋へ案内するね」
「……ん」
とにかく、落ち着いた場所で話そうと美月は階段を上がる。
それに続いてイクシスも言われた通りついて来る。
部屋の中へイクシスを入れて、美月は飲み物を持って来る為にまた下へ降りた。
台所にある冷蔵庫を開け、コップ2つにお茶を注ぐ。
棚にあったお菓子も添えてトレーに乗せ、バランス良く階段を上がって行く。
こんな感じ、久しぶりだな…
何処か擽ったい気持ちで部屋を開ければ、イクシスはぼんやりと窓の外を眺めていた。
そんな彼の様子に何となく声が掛け難くて、そっと小さなテーブルにトレーを置く。
「…みづき。」
「何?」
気付いたのか、イクシスはテーブルの方へ近づいて座った。
名前を呼ばれた美月は素直に返事をした。
「…此処は寂しい所だね…」
「…え……」
イクシスの言葉に美月は絶句して何も答えられない。
頭を強く殴られた気分になった。
何故なら、自分自身そう思っているからだ。
寂しい、退屈、孤独…
美月は様々な虚無感に捕らわれて身動きが取れずにいた。