吸血鬼の翼



何故、この世界へ?

もしかして、イクシス君も聖女を探しに来たのかな…

聞きたくて仕方がなかったが、果たして、自分は知る権利があるのだろうか。
美月はそんな思いが心を支配してただイクシスを見つめるしかなかった。

それにきっと、聞いたって自分には何にも出来ないだろう。

その気持ちを何処かへ逃がそうと美月は他の事に思考を集中させた。

未だに床を見ているイクシスの耳にふと目をやる。
両耳に付けている黒い十字架のピアス。
それは彼が動く度に小さく揺れていた。

「…綺麗だね」

「……何が?」

不意に声を掛けられたにも拘わらず、イクシスは驚く素振りを見せずに美月の言葉に問い掛ける。

すると美月は小さく微笑んで、人差し指でイクシスの耳を差した。

「そのピアスの事だよ。」

「……これは…」

美月の返事に反射的にイクシスは口を開く。
しかし、直ぐに引っ込める様に口を閉ざした。
何処となく、寂しそうな表情を見せる彼に美月は悪い事を言ってしまったのかと後悔した。

「ご、ごめんね…私…」

直ぐ様、謝ろうと美月は慌てた口調でイクシスに話しかける。
そんな美月の反応に先程の表情等、忘れたかの様に今度はイクシスが小さく微笑んだ。
本当に分かるか分からないかの微かな表情で笑う。

「…何で、謝るの?」

「だって、あの…えっと」

言葉を選んで懸命に口に出そうと頑張る美月を余所にイクシスは口を開く。

「……これはルイノから貰ったものなんだ。」

「ルイノさんから…」

話に聞いただけの人物だったが、穏やかな雰囲気を持つ司祭を頭の中で想像した。


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