吸血鬼の翼



あれから昼休みに入り、美月と千秋は教室の端の机を2つ向かいに合わせにくっつけて昼食を採っていた。

「次、何だっけ…?」

「確か英語かな。」

朝方の面影もなく、すっかり何時もの千秋に戻っていた。
美月はその姿を見て一安心する。
しかし、やはり周りは失踪事件の事で頭がいっぱいの様で何処か暗い。

「そういえばさぁ…明日から少しの間、休校になるらしいよ。」

「…やっぱり、今の事件の」

ホームルームに言うであろう内容を千秋は先に先生に聞いていたらしく、淡々と話す。
確かに失踪事件に怯えて欠席している子達がちらほら窺える。
今の状況を見たら、そうした方が良いのかもしれない。

「何、真面目な顔してんだよ。似合わねー」

千秋が片手に持っていた菓子パンを頬張っていると突然、頭上から低い声が掛かる。
その声に反応して美月と千秋は一斉に見上げた。

眉より上の前髪に全体的に金色の短髪。
意地悪そうなつり目に茶色の瞳、性格が現れているのか制服を着崩した少年が立っていた。

「…佐々木」

その姿を見た瞬間、一気に千秋の表情が心底嫌そうに歪められる。

「んだよ、その顔。何か文句でもあんのかよ。」

千秋は佐々木と小学生からの幼なじみらしいのだが、2人の関係はいつまで経っても変わらない。
美月は中学生からこの2人を見ているが、会えば喧嘩ばかりしている。
何時もの事だと慣れてはいるが、美月は苦笑を漏らずにはいられない。

「大アリよ!どっか行ってよ、ご飯が不味くなる!」

「あ~うるせえなぁ、何処に居ようが俺の勝手だろ。」

千秋の挑発に動じてないらしく、佐々木と言われた少年は気怠そうに返す。

その態度が千秋の神経を逆撫でしたらしく、その場から勢い良く立ち上がり睨み付けた。
だが、佐々木の方に身長がある為、千秋を余裕ある笑みで見下す。
そんな一触即発状態の2人を美月は焦りながら交互に見た。


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