吸血鬼の翼




あれから直ぐテピヨンの匂いを辿って歩いていた3人だったがいつまで経っても、千秋の行方が掴めずにいた。

空は緩慢と暗くなり、日は直に暮れるだろう。
数時間ずっと歩いていたので、流石に少し疲れていたが、美月は重くなった足を叱咤して前に進んだ。

周りを見れば、見た事のない場所だった。
こんな処、美月は知らない。
もしかすると佐々木だって分からない地域かもしれない。
家の数が疎らになっていて、人通りもない。
奥へ進んで行くと幾つもの廃れた工場がポツリと寂しく建っている。

美月は閑散とした街並みに少しだけ不安が頭を過ぎった。

本当に千秋はこんな所にいるの?

イクシスは少しも疲労等見せずに先々と歩いて行く。
佐々木も体力的には問題はないみたいだが、歩いていく度に表情に苛立ちが見え始めていた。


「おい、何処まで行くんだよ」

「………。」

佐々木の怒気混じりの問い掛けにイクシスからの反応はなく、淡々と歩いていく。
益々、怒りの募る佐々木に対して美月は慌てて駆け寄った。

「佐々木君、多分…集中してるんだよ」

「ンだよ、ったく…」

美月の制止に佐々木は口を尖らせつつ渋々、イクシスへついて行く。

「佐々木君、此処知ってる?」

苦笑を浮かべた美月は彼の気を紛らわそうとして、話し掛ける。
それに対して佐々木は唸り声を上げて難しい表情を浮かべた。

「此処が何処なのかは分かんねぇけど…確か、俺が小学生の時に“ゴーストタウン”があるって噂があったな」

「ゴーストタウン…」

佐々木の言葉に一瞬、ひやりと冷たいものが美月の背中をなぞった。


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