吸血鬼の翼
「行くの?」
「そうせな始まらん、嬢ちゃん等は此処に居り、その方が安心やしな」
美月の頭をわしわしと撫でるとラゼキは真っ直ぐドアまで歩き出す。
それを見送ってしまう自身に気付いた美月は思わず、立ち上がり後を追った。
「待って、私も行く!」
「………嬢ちゃん…」
行く気満々の美月を見て、ラゼキは呆れた表情を浮かべた。
それはもう、うんざりだとでも言いたげな視線を美月へと送る。
「やっぱり意味分かってへんな…危ない所にわざわざ嬢ちゃんを連れて行く程、アホちゃうで、俺は。」
キッパリとラゼキからお断りの言葉を聞いて、一瞬、何も言えなくなった美月だったが首を左右に振る。
「残るのは嫌…」
「…ええから此処に居れ、言うこと聞かなアカンで。」
そう言ったラゼキの手は美月の肩を部屋へと押し戻した。
少し気圧された美月だったが、ラゼキの要望に応える事はない。
「だって、千秋は私の親友なの!!!」
“美月だけは居なくならないで…急に消えたりしないでね”
千秋、ごめんね。
私があの時、保健室に預けるんじゃなくて、ちゃんと傍に居てあげれば良かったんだ。
あんなに私を心配してくれた大切な親友。
絶対失いたくないよ!
「……親友か。」
「だから、お願い!」
ラゼキがポツリと呟くと美月は彼に懇願の眼差しを送る。
「ダメや。」
又しても、許可が下りる事なくラゼキの声はキッパリとそう告げる。
美月はそれならとラゼキの腕にしがみついた。
「連れて行ってくれるまで離さないから!」
「……嬢ちゃん、ホンマに子供やな…」
呆れた様に、否、呆れて溜め息を吐くラゼキは空いてる方の片手で頭を抱え込んだ。