吸血鬼の翼
制服は無惨にも破かれてしまい、その切れ端はロヴンによって投げ捨てられる。
予想だにしなかった美月の思考回路は混乱して今にもパンクしそうになっていた。

兎に角、露わになる素肌を隠そうとその場にしゃがみ込んで両腕で自身を抱きしめる様に胸元を覆う。

「…や、だ…」

「アハッ、これだけで吃驚するなんてチョロイね。もう終わりかな?」

ロヴンは美月が動揺している様を見て嘲笑う。
それを見ていたラゼキは怒りで溢れ、美月の元へ向かおうと腰を上げる。

「このガキっ…!」

「駄目…!ラゼキ、来ないで!」

今、貴方が私の所に来たらイクシス君はどうなるの?
それにラゼキだって重傷なのにまた戦ったら、今度は本当に死んじゃうかもしれない。

美月は精一杯、ラゼキの救助を拒絶した。
その声にビクリと強張った後、ラゼキは目線を下に向けると腰を静かに下ろす。
気持ちを抑制する為に引き結んだ口元は悔しそうに戦慄いていた。
分かっているのだ。彼女の決意も気持ちも。
分かってしまったからこそ、無力な自分に腹が立つ。
ラゼキはキツく瞼を閉じてイクシスの治癒に専念した。

「意外と根性はあるねぇ、それも何時まで保つかな?」

淡く月に照らされたロヴンは何処か魅了する部分も秘めていた。
しかし、今の美月にとって恐怖の塊に過ぎない。
啖呵をきったものの、やはり現実は違う。
死ぬ程、怖くて挫けそうになる。
しかし、逃げる事は許せない行為だともう1人の自身が心の内から叩いてるのも確かだ。
それを幾度となく繰り返し、こうしてロヴンと対峙している。

本当はちゃんと守りたい。
自身に関わる人達を。
でも、私は私のやり方で皆を守るしかないんだ。

「貴方が降参するまで…よ」

美月はしゃがみ込んだまま、薄茶の瞳をロヴンへと向けた。
真っ直ぐな想い。
誰にも穢す事の出来ない純粋な瞳。
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