吸血鬼の翼
天気は更に悪化する―。
イルトは打ち付ける様な激しい雨にも動じず、其れ処か手の平に光を宿し、膨張させていく―。
「…フン」
クラウはその気に威圧されて体が震えていた。
彼の能力(ちから)を本能が恐れている。
しかし、クラウはそれを隠す様に鼻で笑い、口元に手を当てて、顔を歪ませた。
その様子にイルトは反応し厳しい視線を更に彼に送る。
クラウはイルトが反応したのを確かめ、笑う声は次第に大きくなっていった。
「…お前なんかが、その女を守れるのか?」
「何…!?」
今まで微動だにしなかったイルトの瞳はクラウの言葉によって動揺した色に一変する。
「…その女も“ルイノ”の様にする気か」
「─────…ルイノ…」
その言葉を聞いた瞬間、イルトの時が止まる。
イルトはクラウの放った名を繰り返し呟くと、過去の出来事がフラッシュバックの様に頭を過ぎった。
鮮やかな緑色をした長い髪と同じ色をした瞳―。
綺麗に整った容姿。
何より凛とした表情が印象的な青年だった。
イルトの中で何か糸の様なモノがプツンッと音を発てて切れた。