吸血鬼の翼
空は雲に覆われ辺りを暗くしていく―。
公園に足を急がせていたラゼキは周りの様子を窺う。
まるで、何かの気を探る様にして―。
公園の敷地に足を踏み入れると真っ直ぐグランドへと進んだ。
そしてフェンスの扉を開け放ち中へと入った。
「……これは…!!」
ずぶ濡れになったラゼキの髪から滴がポタポタと零れてきて視界を邪魔する。
しかし、ラゼキの橙の瞳はグランドの状態をハッキリと映した。
そこら辺りは焼け野原になり、雑草は焼け焦げ、地面は何か隕石が降ってきたかの様に穴が出来、更には其処から亀裂が入っていた。
こんな惨事になっているのにも関わらず住民達は誰も気付いている気配はない。
「……こんな事、出来る奴はアイツしかおらんな。」
心当たりがあるのか、ラゼキはその人物を思い浮かべる。
「かわいそうにな、誰にも気付いてもらえへんで…でも、もう大丈夫やで。」
そうしてゆっくりと目を伏せ、ラゼキは何かを唱え始めた。
どうやら呪文の類いらしい。
詠唱に反応したラゼキの両手は暖かな光を宿した。
その光は静かにグランドを包んでいく。
次第に光を帯びた魔法に地面は反応したのか、亀裂があったものや雑草の焦げは見る見る内に在るべき姿へと戻っていく―…。
「…もう2度と、“あっち”から来られへん様に結界でも張っとかなあかんな…、うっ…!?」
ラゼキがそう呟いた瞬間、空気が唸っている様な感覚に襲われる。
「……イル?」
痙攣を引き起こされそうになる体をラゼキは己の腕を強く掴み、堪えて元来た方角を見やった。