吸血鬼の翼
「な、なんで──…」
唐突なイルトの言動に一瞬戸惑った。
美月は信じられないという目でイルトに訴えかける。
動揺して続きが上手く言えない。
いきなり過ぎて、どう対処すれば良いか分からない。
悲しい表情を浮かべたイルトは両手を額に押し当て首を此方へと捻らせる。
「ミヅキを巻き込んだ…俺と一緒にいれば、またクラウみたいな奴等に襲われる。」
「…大丈夫よ、このくらい!全然何ともないんだから」
美月は思わず声を荒げてしまう。
何が怖いのか、喋る口調まで震えて情けない。
尚もイルトは今にも壊れそうな雰囲気を漂わせる。
ただ美月は左右に首を振った。
何かを振り払うかの様に…。
そしてイルトの両手をしっかりと掴んだ。
放さないと言う代わりに…。
「ミヅキ……」
「嫌よ!!聞きたくない!」
イルトのこれから話すであろう言葉を大声を出して拒否する。
そんなの、聞かなくても分かってる!
だから、聞きたくないの…!
「ミヅキ─…!!」
イルトは戦慄く美月を見兼ねたのか彼女の名前を呼んで両肩をしっかりと抱き、引き寄せる。
「お願いだ…分かって欲しい、ミヅキを───ルイノみたいにしたくないんだ!!」
「ル、イノ…」
イルトが魘されていた時に寝言で言っていた言葉。
美月はイルトの背中の服を小さく掴み返した。