吸血鬼の翼


幾分時が過ぎた後も、美月は相変わらずベッドに横になっていた。

「ミヅキ─…」

声がしたかと思えば、静かにドアの開く音を聞いたので美月は其方に視線を移した。

「……イルト!」

意識が回復したのか、イルトの表情は正気を取り戻し、ちゃんと美月をその瞳に映していた。

安堵した美月は自分の状態を見て慌てて体勢を整える。
イルトはニコッと優しく笑い、美月の座っているベッドへと歩み隣りに腰を下ろした。

「ごめん、ミヅキ。」

「いいよ。この通り、平気だし」

美月は手の平を左右に振って大丈夫だって事を示す。
少しでもイルトの不安を取り除こうとその気持ちから。

「俺─…」

イルトは目を伏せ、何かを考えている。
美月はその雰囲気に嫌な予感がした。

「もう…ここにはいられない」

「!?」

イルトの言葉を耳にした瞬間、美月の体が凍り付いた様に動けなくなった。


< 44 / 220 >

この作品をシェア

pagetop