吸血鬼の翼



「本気で聞いてるのに…!!」

そう言ったイルトは眉間に皺を寄せ、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。

ルイノは彼の行動を予想していたので冷静にイルトの機嫌を直そうと彼の小さな肩に自分の手をポンッと優しく置いた。

「ごめんね、でも何だか…」

「……おかしい事、言った?」

イルトはそっぽを向いたままで、ルイノにそう返事をした。

肩は微かに震えていて顔は少し前屈みになって俯いている。

きっと勇気のいった言葉だったのだろう──。

それもちゃんと理解していた事だったのだが、何だか悪い事をしたみたいで苦い気持ちになる。

今度はイルトの背丈に合わせて横にしゃがみながら、口を開いた。

「ううん…、全然おかしい事じゃないよ。」

「え?」

「僕にはもう君が側にいるのが当たり前になっていたから…つい。」

「…」

ルイノがよく透る声で言ったものだから、イルトは思わず、絶句してしまう。

首を傾げてイルトの顔を覗くと今度は恥ずかしそうに下を向いている。…勿論、ルイノに見えない様に。

「大切な子だよ…」

彼の頭を優しく撫でて、ルイノは穏やかに吹いている風を頬に受ける。
少年は木の葉の小さな優しい音に耳をすませ、白い服を纏った青年に身をゆっくりと委ねた。



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