吸血鬼の翼
穏やかな青年、ルイノはこうした性格の持ち主だが…意外にも巨大な魔力をその身に宿している。
今更ながらなのだが、ルイノは司祭である。
如かし、その一方で彼はもう1つの顔を持っていた。
それは"生けし人々"への"危害になる者"の退治。
…主に半獣人や魔物を対象にルイノはそれらを退治している。
当然、怪我や事故等は普通の事で危険極まりない職に彼は就いている訳だ。
無論、ルイノの“能力”のおかげでこの町は助かっている。
(それは町や民に安心を与える事になる)
それ故に民からの信頼は厚いものだ。
彼の顔を見る為、わざわざ礼拝堂に来る者もいるという程に。
イルトはそんな彼に不思議と心を許している。
通常の立場なら、相容れぬ者どうしの筈なのに。
吸血鬼と司祭…、不自然と言えば不自然な関係なのだが。
又、ルイノも気兼ねなく他の人と変わらぬ振る舞いをしていた。
否、それ以上にイルトを自分の身内みたいにごく自然に接している。
「ルイノ」
「ん?」
洗濯を干しているルイノの傍らではひょっこりとシーツの影から顔を覗かせ、イルトは彼を見上げた。
「ずっと―…側にいていい?」
突然のイルトの言葉にルイノは目を見開き呆然と眺めた。
少年の瞳は真っ直ぐ純粋にルイノを見ている。
それが何だか可愛らしくて思わず気の抜けた笑いがルイノの口から漏れた。
その彼の軽薄な態度にムッとしたイルトは顔をしかめた。