吸血鬼の翼
「…そういえば、ラゼキは??」
後ろを振り向いてみると、数分前にはそこにいた筈のラゼキの姿がなかった。
否、それは己の時間感覚なだけで、もしかしたら結構な時間が経っているのかもしれないと少年は橙色に染まっていく空を眺める。
ルイノは何だか知ってるようで礼拝堂ではなく、その向いより少し離れの古びた大きな建物を見た。
それにつられてイルトもルイノの視線の先を目で追う。
「ラゼキはあそこに行ったんだよ。」
「何?あそこ??」
「……今はラゼキの修行場になってるね。」
「そうなんだ…」
ルイノからそれだけ聞けば、なんとなく理解したイルトは黙ってその建物を眺めた。
──────
────…
━━━‥
「チッ!」
吐き捨てる様に舌打ちしたラゼキは膝から崩れる様に床に手をついていた。
その床には魔方陣らしきものが、彼の3倍くらいの範囲の広さで描かれている。
額からは汗が滲み出ていて、体も異様に熱くなっているのが朦朧としている頭でも分かる。
「……これ…以上、やったら身が…もたんな…」
息は荒々しくなって呼吸もおぼつかない―。
ひとまず、ラゼキは乱れた息遣いをなんとかする為に背後にある長椅子に腰を下ろして落ち着かせた。
するとここに来るのだろうか、パタパタと忙しく走る足音が彼の耳に入ってきた。
それに集中して反射的にラゼキは身構えた。
バンッ!
「ラゼキ!!」
「…イルト!!」
扉が勢い良く開かれたその先にいたのは紛れもないイルトの姿だった。